中学校 技術分野の学習内容


  1. はじめに
     本稿では,中学校の技術・家庭科の学習内容(主に技術分野)について述べる。今回,福井県の中学校で使用されている教科書[1]と参考書[2]をもとに,それぞれの学習内容について,どのようなものがあるかを検討した。
  2. 技術科の内容
     技術科の学習内容は大きく分けて,木材加工,電気,情報基礎,金属加工,機械,栽培の6分野に分けられる。学習内容については,以下にまとめた。
    (1)木材加工
    @木材の性質
    木材の特徴と各部の名称   ・特徴 >>> 軽くじょうぶで加工しやすいが,変形する。
    ・まさ目材と板目材 >>> まさ目材→木目が平行
                 板目材→木目が不規則
    ・板目材の表裏 >>> 樹皮側(木材の外側)→木表
               髄側(木材の中心側)→木裏
    木材の強さ   ・強い木材 >>> 比重が大きいもの。乾燥したもの。
    ・力のかかり方と強さ >>> 繊維(木目)方向に力を加えた場合,
                  強い← 引っ張り>曲げ>圧縮 →弱い
    木材の変形   ・木材の伸縮 >>> 水分を吸う→膨張。乾燥する→収縮。
    ・伸縮量の違い >>> 年輪の接線方向>半径方向>繊維方向
     
    A設計
    設計の手順   ・設計の進め方
    使用の目的と条件→機能・構造などの設計の要素→構想図製作図
    じょうぶな構造   ・組み合わせ >>> 三角形の構造にする。補強材を使う。
    ・繊維方向 >>> 繊維の方向を,部材の長手方向にする。
    ・接合方法 >>> 接合の材料(くぎ,接着剤),接合のしかた(組みつぎ,ほぞつぎ)などをくふうする。
    図面のかき方   ・立体を表す方法 >>> キャビネット図等角図正投影図
    ・線の種類 >>> 外形は太線,寸法は細線,かくれ線は破線(点線)。
     
    B材料取り
    製作の手順   けがく→切断する → けずる  →接合する→塗装する
     (材料取り)   (部品加工)   (組立・塗装
    けがき   ・荒けずり >>> けがきの前に自動かんな盤を使って行う。
     長さ300mm以下,厚さ5ミリ以下の木材はけずらない
    理由:材料がつまったり,折れたりなどの事故防止のため。
    ・けがき >>> さしがね,けびきなどを使って行う。
    ・切りしろ・けずりしろの幅 >>> 3〜4mm程度
    のこぎりびき
    丸のこ盤,糸のこ盤  
    ・のこぎりびき >>> 縦びき・横びきを適切に使い分ける。
    ・ひくときの角度 >>> かたい物・厚い物→角度を大きく(30〜45度)
              やわらかい物・薄い物→角度を小さく(15〜30度)
    丸のこ盤 >>> 刃先は,材料面から約5mm出して切る。
     
    C部品加工
    かんなけずり   ・刃先調節法 >>> 刃を出す→かんな身のかしらをたたく
              刃を抜く→台がしらの角をたたく
    ・板材を削る方法 >>> ならい目(繊維に逆らわない方向の木目)の方向にけずる。
    ・板材を削る順序 >>> 木裏→木表→こば→こぐち
    ほぞ穴加工   ・のみの種類 >>> たたきのみ→げんのうでたたいて使う。
              つきのみ→手でついて使う。
    ・角のみ盤での穴あけ >>> けがき線の両端から穴をあける。
     
    D組立・塗装
    きり   ・下穴あけに使用するきりと下穴の深さ
      くぎ→くぎの長さの1/2〜1/3(四つ目ぎりを使用する)
      木ねじ→木ねじの長さの2/3〜1/2(見つめぎりを使用する)
    くぎ   ・げんのうでくぎ打ちに使用する面
      打ち始め→平らな面。 打ち終わり→曲面
    理由:木材を傷つけないようにするため。
    塗装   ・素地みがき >>> 紙やすりを木片に巻き,繊維方向にみがく。
    ・目止め >>> 目止め剤をすりこみ,半乾き状態でふきとる
     目止め剤 >>> との粉(と石の粉)+水+のり
    ・はけ塗り >>> 木材の繊維の方向に塗る。
     
    E木材の利用
    木材の利用 と役割   ・日本での木材消費量 >>> 1年間に1人あたり約1立方メートル
     消費量の約7割が輸入(アメリカ,マレーシア)→輸入材のほうが安価なため。
    ・世界の森林 >>> 年々減少している→森林を守り育てるとともに,木材を有効に使う必要がある(リサイクルなど)。
     
    (2)電気
    @電気エネルギーとその利用
    電気回路   ・電気回路 >>> 電源,負荷などをふくむ電流の流れる道すじ。
    ・電源 >>> 直流電源(乾電池など)と交流電源(家庭のコンセントなど)がある。
    ・負荷 >>> 電気を熱,光,動力などに変える部分。
    回路図と回路計   ・回路図 >>> 電気用図記号を使って回路を簡潔に表したもの。
    ・回路計 >>> 電圧(直流と交流),直流電流,抵抗が測定可能。
    家庭での利用   ・屋内配線 >>> 電力量計,分電盤をえて各部屋へ。
    ・交流の周波数 >>> 東日本では50Hz,西日本では60Hz
     
    A電気機器としくみと利用
    電気機器のしくみ
    光としての利用
    ・白熱電球 >>> 発熱によってフィラメントが光る。
    ・蛍光灯 >>> 放電現象を利用して,蛍光物質を光らせる。
     点灯回路→グロースタータ,安定器,コンデンサで構成。
    熱としての利用   ・発熱体 >>> 電流を流すと熱が発生する。抵抗が大きい。
    ・自動温度調節機 >>> バイメタルによって一定温度に保つ。
    動力としての利用 ・電動機 >>> 電気エネルギーを回転のエネルギーに変える。
    ・電動機の種類 >>> 整流子電動機誘導電動機がある。
    情報伝達への利用
    電気機器の安全・点検  
    ・音声 >>> 耳で聞くことができる空気の振動。
     音声と電気信号の変換→マイクロホン,スピーカーなど。
    ・増幅回路 >>> 小さな電気信号を大きくする回路。
     
    B電子部品のはたらき
    抵抗器   ・種類 >>> 固定抵抗器可変抵抗器がある。単位はΩ。
    ・はたらき >>> 電流を制限したり,電圧を調整したりする。
    コンデンサ   ・種類 >>> 磁気コンデンサ,電解コンデンサなどがある。
    ・はたらき >>> 電気をたくわえることができる。
    ダイオード   ・2つの電極 >>> アノード(A)カソード(K)がある。
    ・はたらき >>> 片側(A→Kの方向)からしか電流を流さない。
    トランジスタ   ・種類 >>> npn型とpnp型の2種類がある。
    ・3つの電極 >>> ベース(B),エミッタ(E),コレクタ(C)
    ・はたらき >>> 電流(電圧)の増幅作用がある。
     ベース電流(B〜E)が少し変化コレクタ電流(C〜E)が大きく変化
     
    C電気回路の設計・製作
    設計・製作の手順   ・設計手順 >>> 使用目的→回路図→部品選択→構想図
    ・製作手順 >>> 部品検査→部品とりつけ・配線→点検
    ・部品の検査 >>> 回路計を使って絶縁・導通などを検査する。
    検知器の設計 ・検知器 >>> 端子間に導通があれば音や光で知らせる装置。
    マルチ報知器   ・マルチ報知器 >>> センサを変えられる多目的な報知器。
     トランジスタの増幅作用を利用→コレクタ回路にブザーを接続し,ベース電流をセンサによって調節する。
    ・水位報知器・断線報知器 >>> 水位の上昇や断線を検知する。
    ・光報知器 >>> 光導電セルを使う。
     
    (3)情報基礎
    @生活とコンピュータ,基本操作
    生活と コンピュータ   ・情報の活用 >>> 現在では,気象情報,交通情報,生活情報などの情報ををコンピュータによって処理,活用している。
    ・情報の表現 >>> 情報は文字,数値,図形,画像などで表現。
    コンピュータの基本操作   ・起動と終了
    ・フロッピーディスクの扱い方 >>> ディスク装置の作動ランプ中ディスクを抜いてはいけない
     
    Aソフトウェアの活用
    ソフトウェア の分類   ・基本ソフトウェア >>> オペレーティングシステム(OS),プログラム言語など。
    ・応用ソフトウェア >>> 特定の目的のための機能を持つ。日本語ワードプロセッサ,表計算ソフトウェアなど。
    応用ソフトウェア   ・日本語ワードプロセッサ >>> 画面上で文書を作成し編集できる。
    ・表計算ソフトウェア >>> 画面上で集計用紙(ワークシート)に表を書いたり,自動計算したりする機能がある。
    ・データベース用ソフトウェア >>> データベースを管理し,条件に合うものをさがし出す(検索)機能がある。
    ・図形処理用ソフトウェア >>> 図形を作成する。
     
    Bプログラムの作成
    プログラム のしくみ ・プログラム言語 >>> BASIC,FORTRAN,COBOL,アセンブラ言語,LOGO,C
    アルゴリズムとフローチャート ・アルゴリズム >>> 問題を解く手順,論理。
    フローチャート(流れ図) >>> 処理の手順を記号で表したもの。
    BASICの命令   よく使う命令 >>> PRINT,INPUT,LOAD,SAVE,RUN,LIST,GOTO,
    IF〜THEN〜ELSE,CLS,END
     
    Cコンピュータのしくみと情報社会
    5大機能   ・コンピュータの5大機能
     入力機能,出力機能,記憶機能,演算機能,制御機能
    情報の 処理の仕方   ・ビットとバイト >>> ビットは情報の最小単位。
     8ビット=1バイト,1024バイト=1キロバイト
    ・ROM >>> 読み出し専用のメモリ。
    ・RAM >>> 読み書き可能なメモリ。
    コンピュータと情報社会   ・情報の価値 >>> 情報そのものに価値がある。他人の情報を破壊したり,勝手に利用したりしてはいけない。
    ・情報のモラル >>> ソフトウェアは著作権法で保護されている。
     
    (4)金属加工
    @金属の性質と設計
    金属の特徴 ・おもな特徴 >>> 硬く,光沢がある。熱伝導性・加工性がよい。
    ・組織 >>> 木材のような方向性がない。
    金属の性質 ・弾性と塑性 >>> 力を加えて元に戻る性質変形が残る性質
    ・組織 >>> 木材のような方向性がない。
    ・さび >>> 金属が空気中の酸素によって酸化してできる。
     さびを防ぐ >>> 塗料やめっきで表面をおおう。
    金属材料   ・鉄鋼 >>> 一般に炭素が多いほど,硬く強くなる(ただし鋳鉄はもろい)。
    ・合金 >>> 金属に他の元素をとかし合せ,性質(硬さやさびに対する強さ)を改良。
    じょうぶな構造   ・薄板のくふう >>> 折り返し,折り曲げ,ふち巻き,波型
    ・棒材の形 >>> I形・H型・L型・丸型・管型。
     
    A材料取り
    けがき   ・けがき >>> 加工に必要な線や印を材料にしるす作業。
    ・使用する工具 >>> けがき針,鋼尺,直角定規など。
     棒材の場合 >>> Vブロック,トースカン,常盤。
    切断   ・使用する工具 >>> 薄板→金切りばさみ,押し切り
               厚い板・棒材→たがね,弓のこ
     
    B部品加工
    穴あけ ・卓上ボール盤,ハンドドリル >>> ドリルで材料に穴を開ける機械。
    折り曲げ   ・折り曲げ >>> 折台に載せた材料を,打ち木でたたく(両側,中央の順)。
    ・折り返し >>> おりまげた後,裏返して刀刃を使って折り返す。
    やすりがけ
    旋削
    ・旋盤 >>> 材料を回転させバイトを使ってけずる。
     
    ねじ切り   ・おねじ切り >>> ダイスを使って行う。
    ・めねじ切り >>> タップを使って行う。
    部品の検査   ・検査項目 >>> 平面度・直角度・寸法など。
    ・ノギス >>> バーニヤを使うと0.05mm単位まで読み取れる。
     
    C組立・塗装
    接合   ・はんだ接合 >>> はんだをとかして金属どうしを接合する。
    ・リベット接合 >>> リベットを使って金属どうしを接合する。
     リベット >>> 接合する材料よりやわらかい金属を使う。
    塗装   ・塗装の方法 >>> はけぬり塗装,ふきつけ塗装,浸せき(どぶづけ)塗装などがある。
     
    (5)機械
    @機械の仕組み1
    機械の発達と構成 ・機械は4つの部分からできている。
    @受動部 A伝道部 B仕事部 C指示部
    回転運動を伝えるしくみ   ・種類 >>> 摩擦車,ベルト車,歯車,チェーン車など。
    ・回転比(速度伝達比)=原車の回転数(n1)/従車の回転数(n2)
               =従車の直径(d2)/減車の直径(d1)
    機械要素   軸受 >>> 回転する軸をささえるしくみ。
    ねじ >>> 部品の締め付けや結合に使う。
     ねじの呼び方→M5⇒外径5mmのメートル並目ねじ。
     
    A機械の仕組み2
    リンク装置   ・リンク装置 >>> 棒(リンク)を連結し運動の形を変えて伝える。
     クランク→回転運動をするリンク。
     てこ→揺動運動をするリンク。
    ・てこクランク機構 >>> 回転運動⇔揺動運動(ex自転車)
    ・往復スライダクランク機構 >>> 回転運動⇔往復直線運動(exミシン)
    カム装置   ・カム装置 >>> カムの形によって運動の形を変える。
     回転運動→往復直線運動または揺動運動(exおもちゃ)
    機械材料   ・鉄鋼 >>> 含まれる炭素量で炭素鋼鋳鉄に分かれる。
    ・合金 >>> 2種類以上の金属を加え合わせたもの。
     
    B機械の整備とガソリン機関
    機械の整備   ・整備 >>> 安全で調子のよい状態に保つための点検や調整。
    ・整備工具 >>> 一般工具(ねじ回し,スパナ,レンチなど)と専用工具がある。
    原動機   ・原動機 >>> 自然界のエネルギーを動力に変える機械。
      ↓
     熱機関→・外燃機関→蒸気機関など
      ↓  ・内燃機関→・ガスタービンなど
     水 車       ・ピストン機関→・ガソリン機関
                       ・ディーゼル機関
    ガソリン機関のしくみと整備   ・ガソリン機関 >>> 4サイクル機関2サイクル機関がある。
     4サイクル機関の4行程→吸気−圧縮−膨張−排気
    ・機関の構成 >>> 機関本体付属装置に分けられる。
     付属装置→燃料装置,点火装置,潤滑装置,その他(消音装置など)
    ・始動前 >>> 必ず始業点検を行い,暖機運転する。
     
    (6)栽培
    @生育と環境
    生育と光   ・短日植物 >>> 日長が短くなると開花する植物。
    ・長日植物 >>> 日長が長くなる都会化する植物。
    日長処理 >>> 電照栽培,しゃ光栽培などがある。・
    生育と温度   休眠 >>> 適温でない時期に生育を一時休止すること。
    ・温度処理 >>> 温室栽培,ビニルハウス栽培など。
    生育と水
    生育と土
    ・団粒構造(すき間が多い)→生育に適す。単流構造→生育に適さない。
    培養土 >>> 川砂,田畑の土,腐葉土,肥料を混ぜて作る。
    生育と養分   ・肥料の三要素 >>> ちっ素(N),りん(P),カリウム(K)
     
    A栽培計画
    植物の種類 草花  1年草 >>> たねをまいてふやす(アサガオ)
     宿根草 >>> 長年発芽し,開花する(キク)
     球根類 >>> 球根ができるなかま(チューリップ)

     葉菜類 >>> 葉や茎を食べる(キャベツ,レタス) 
     果菜類 >>> 果実を食べる(トマト,ナス)
     根菜類 >>> 根や地下茎を食べる(ダイコン)
     
    野菜  
    栽培計画
    栽培の仕方  
    ・苗のつくり方 >>> 種子繁殖法と栄養繁殖法がある。
    ・たねのまき方 >>> すじまき,ばらまき,株まき(点まき)
    ・病害虫の予防のために注意する点 >>> 肥料のバランス,土の酸度,日あたり,強い品種を選ぶなど。
     
    B草花と野菜の栽培
    草花の栽培   ・秋ギクの電照栽培 >>> さし芽→鉢あげ→摘しん(しんをつむ)→
                 鉢がえ→誘引→支柱立て→摘芽→
                 摘らい(つぼみをつむ)→輪台つけ
    ・マリーゴールドのロックウール耕栽培 >>> 培養液で生育。
    野菜の栽培   ・トマトの栽培 >>> 早熟栽培も行われる。連作をさける。
    ・レタスの栽培 >>> 冷涼な気候を好む。水耕栽培も可能。
    ・ハツカダイコン(ラディッシュ)の栽培 >>> 育成期間が短い。
    栽培技術の進歩   ・施設栽培 >>> 季節に関係なく,野菜や草花を栽培できる。
    ・バイオテクノロジー >>> 細胞融合組織培養ができる。
     
     
  3. 家庭科の内容
     家庭科の学習内容は大きく分けて次の5分野に分けられる。具体的な内容については,割愛する。
    (1)家庭生活
    家族の生活,家庭の仕事,家庭の経済,家庭生活と地域
    (2)食物
    青少年期の栄養,調理の計画,日常食の調理,これからの食生活
    (3)被服
    被服のはたらき,日常着の製作,手芸
    (4)住居
    住まい方のくふう,快適な住まい方,これからの住生活
    (5)保育
    幼児のからだとこころの発達,幼児の生活,保育と環境
  4. 考察
     小学校との違いを挙げると,小学校では,おもにに身近な日常生活に関する内容であるが,中学校では,もっと広く,過程や社会での生活が扱われる。また,「木材加工」や「食物」など,いろいろな領域がある。どの領域で学習する内容も,単に技術を身に付けるだけが目的ではなく,技術や知識を家庭生活や社会生活に生かし,家庭や社会をとりまくさまざまな問題について,どれだけ深く考え,理解しているか,ということを重視している。
  5. おわりに
     本稿では,教科書を参考に中学校技術・家庭科の学習内容について述べた。

    参考
    [1]文部省検定済教科書 技術・家庭 上・下;開降堂(1999)
    [2]学研ニューコース 中学技術・家庭;学研(1992)