主免実習を終えた3年生にひと言
■ 2007年度の主免実習(教育実践研究V)が終了しました。
この実習では,3年生が附属学校で子ども達を前にして教室で実際に指導する経験をしました。
飛行機の飛行に例えると,現在の状態は,滑走路を走り,後輪が地面を離れ,機体が浮き,今
まさに上昇中ということになります。
エンジンを吹かして滑走路を走り,スピードを上げ,揚力を得る準備をするのが大学での事前
の学習です。実習までに大学で受けた講義や実践的な学習でがん張っていた人は,実習で手応え
を感じたり,苦労はしたけれども向上への手掛かりを感じたと思います。手を抜いていた人は苦
労したのではないでしょうか。
教師になるために成長できるかどうかは,主免実習後の学習での熱意にも大きく左右されます。
もう一度,飛行機の飛行に例えると,主免実習後の現在の状態は,離陸直後の上昇飛行の体制で
す。
これからどれだけ上昇できるのか,安全に飛行できるかは「これからの機体の整備と操作の上
手さ」にかかっています。
4年生の6月に行われる副免実習(教育実践研究X)が成功するかどうかは主免実習以後,6
月までの学習の成果にかかっていると思います。それまでに幅のある伸びシロをどれだけ確保し
ておけるかがひじょうに重要です。
6月の副免実習で,自分のこれまでの学びの成果を応用し,自分の力としての定着を確認しな
がらの意図的,計画的な実習が展開できるか,それとも単に経験を重ねるだけかでは教師として
の成長に大きな差が出ることでしょう。
主免実習を終えた社会科教育学分野のゼミ生にひと言
■ 教師としての実践的力量は,専門科学の力と教科教育学の力の2つを,いわば車の両輪とする
かたちで養われます。社会科教育を卒論の分野として選ぶと,社会科に関わる専門科学と縁を切
ってしまったように感じているかも知れませんがそうではありません。
今回の実習で分かったかも知れませんが,よい授業は地理,歴史,公民に関する文献やフィー
ルドワークをもとにした豊かな教材研究の上に築かれます。そこでは「何を」「子どもに」「ど
う教えるのか」という教育的視点はもとより,学問的に裏づけられた知識をどの様な探究的な手
法(調べ方や学び方)で追求的に学習させるのかということについてのセンスが強く求められま
す。
私(寺尾)は大学に入学したときは,みんなと同じように社会科教育学など知りませんでした。
日本史や地理が大好きだったので,卒論では日本史を選択しようと思っていました。しかし,1
年生のプレゼミで社会科コースの多様な学問分野を知っていったとき,社会科教育学の印象が強
烈で,大学を卒業してからの自分の姿を構想する機会も提供してくれたのです。
社会科の教員になって,文学部や経済学部の出身者の教員がいる中で,自分のオリジナリティ
を示すとすれば自分を差別化できる資質を身に付けておくのが教育学部出身者に一番よいのでは
ないかと考えるようになりました。人が身に付けていない資質をもっているところに自分が活躍
したり,貢献できたりする場面があります。貢献を認めてもらえれば,それは自分を認めてもら
えることにもつながります。また,小学校の教員となったときのことを考えると,職場には理科
や算数,国語や音楽などの他教科の分野を専攻した人がたくさんいます。その中で,社会科教育
学を深めておけば,「社会科はこのように指導すればよいのです。」とアドバイスしてあげられ,
逆に負い目を感じることなく「代わりに理科の指導の仕方を教えて」とか「その代わり,国語の
指導の仕方を教えて」とかいったように,互いに教え合うことが可能になります。可能にするの
は,社会科を「子どもに教える」「指導する」ということへの限りない自信であると思っていま
す。
話を元に戻しますが,社会科教育学分野専攻の学生にも専門科学の勉強がぜひとも必要です。
私が社会科教育学を専攻するようになって指導教官に最初に言われたのは,「歴史や地理で卒業
研究をしないにしても,何か専門科学の一分野で卒業研究を行った人と同じぐらい専門を深める
こと。違いは卒業論文を書かないことだけぐらいのレベルまで深める。」ということです。結果
的に,私は日本史を深めたのですが,文学部にまで出かけて日本史,世界史の他学部履修をして
いました。大学院ではカリキュラムの上でも文学部の日本史専攻の大学院生と同じ授業や演習を
受けるようになっていましたが,指導教官に助言された学びの方向が指針となっていました。
私の考え方では,教員になる勉強をする教員養成系学部における専門科学へのアプローチは,
文学部などとは異なるように思います。教員養成学部では,追加のワンステージを求められます。
社会科に関係する専門科学を深く学んだ上に,さらに「教育」ということを考えなければならな
いのです。専門科学の成果(知識と方法)を「教育」のフィルターで濾過し,教育的に洗練され
たものを子ども達に提供しなければならないのです。あるいは,子ども達自身が獲得していくよ
うな探究過程を用意し,歩みを支援しなければならないのです。
社会科教育学専攻のゼミ生は,「卒論は書かないが,一分野において卒業研究をすると同じぐ
らい学問的研究能力を磨く!」ということを頭において,専門科学の勉強を深めていって欲しい。
(誤解しないこと。「だったら一分野の専門科学だけ深めればよいんだ」と考えないこと!社会
科教員としてはすべての専門分野を深めることが必須です。卒論までのレベルを考えるか,考え
ないかだけの違いです。)
では,社会科教育学の観点から具体的に専門科学をどう学んでいけばよいのか。これについて
はこれからゼミで学習していきます。ゼミ生は,当面は,社会科実践プラン構成論の授業では,
上に書いているようなこの分野の学習の方向についての意識をもって参加と取り組みをしてもら
いたいと思います。
2004年度 主免実習での大学3年生の授業の様子
(2005年度〜2007年度までのものも整理して掲載します)
■ 附属小学校
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●唐木伸幸君の授業(1) 第6学年社会科 | (2)単元「伊能忠敬と日本地図」 |
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(3)大きく映し出し,知識を共有する工夫 | (4)先を急がず,考える時間を確保! |
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●山下佳美さんの授業(1) 第4学年社会科 | (2)単元「水のふるさと『水源林』」 |
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(3)小学校では特に板書で図を利用する | (4)子どもの考えを次の展開に生かす |
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●笠原宏太君の授業(1) 第3学年社会科 | (2)単元「スーパーマーケットではたらく人びと」 |
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(3)小単元名「しなものはどこから」 | (4)ラベルを手掛かりに調べる |
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●阪井克典君の授業(1) 第1学年道徳 | (2)単元名「ゆっきとやっち」 |
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(3)主題名「助け合う心」 | (4)ぼくだったら,わたしだったら |
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●熊谷俊文君の授業(1) 第5学年社会科 | (2)単元「自動車をつくる工業」 |
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(3)小単元名「未来の自動車」 | (4)クリーンな車は可能かな? |
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●中嶌早百合さんの授業(1)第3学年社会科 | (2)単元「スーパーマーケットではたらく人びと」 |
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(3)品物はどこから来ているかな? | (4)学習問題に立ち戻ることも大切です |
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●駒野雅彦君の授業(1)第4学年社会科 | (2)単元「水源を守る」 |
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(3)ディベート的な学習展開を工夫しています | (4)子どもが前に出て活躍する場面を設定 |
■ 附属中学校